大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成9年(行ケ)155号 判決 1999年3月24日

東京都中央区日本橋本町3丁目5番1号

原告

三共株式会社

代表者代表取締役

河村喜典

訴訟代理人弁理士

新垣盛克

鈴木守三郎

アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94608-2916

エミリービル ホートン ストリート 4560

被告

カイロン コーポレーション

代表者

ケネスエム ゴールドマン

訴訟代理人弁理士

山本秀策

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

(1)  特許庁が、平成5年審判第18773号事件について、平成9年4月21日にした審決を取り消す。

(2)  特許庁が、平成5年審判第18789号事件について、平成9年4月21日にした審決を取り消す。

(3)  特許庁が、平成5年審判第18795号事件について、平成9年4月21日にした審決を取り消す。

(4)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、別紙商標目録1記載のとおり、「RIBA」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品一切」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の区分による。以下同じ。)を指定商品とする登録第45277号商標(明治43年12月30日登録出願、明治44年3月25日設定登録、昭和6年4月9日、昭和25年9月25日、昭和46年7月10日、昭和56年5月30日、平成3年6月26日各存続期間の更新登録、以下「本件第1商標」という。)、同目録2記載のとおり、「リバエース」の片仮名文字と「LIBAACE」の欧文字を2段に併記してなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品とする登録第2127260号商標(昭和55年12月26日登録出願、平成元年3月27日設定登録、以下「本件第2商標」という。)並びに同目録3記載のとおり、「リバ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品とする登録第2262819号商標(昭和57年4月28日登録出願、平成2年9月21日設定登録、以下「本件第3商標」という。)の各商標権者である。

被告は、平成5年9月24日、いずれも原告を審判被請求人として、本件第1~第3商標につき、それぞれ指定商品中「薬剤」について不使用に基づく登録取消しの審判の請求をし、いずれもその予告登録が平成5年11月15日(以下「予告登録日」という。)になされた。

特許庁は、本件第1商標についての同請求を平成5年審判第18773号事件(以下「本件第1審判事件」という。)として、本件第2商標についての同請求を平成5年審判第18789号事件(以下「本件第2審判事件」という。)として、本件第3商標についての同請求を平成5年審判第18795号事件(以下「本件第3審判事件」という。)として、それぞれ審理したうえ、平成9年4月21日、本件第1審判事件につき、「登録第45277号商標の指定商品中『薬剤』についてはその登録は、取り消す。」との、本件第2審判事件につき、「登録第2127260号商標の指定商品中『薬剤』についてはその登録は、取り消す。」との、本件第3審判事件につき、「登録第2262819号商標の指定商品中『薬剤』についてはその登録は、取り消す。」との各審決をし、その各謄本はいずれも平成9年6月2日に原告に送達された。

2  各審決の理由の要点

本件第1~第3審判事件の各審決(以下、単に「各審決」という。)は、別添平成5年審判第18773号事件審決書写し、平成5年審判第18789号事件審決書写し及び平成5年審判第18795号事件審決書写し記載のとおり、本件第1~第3商標及び「リバガーゼ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「ガーゼ」を指定商品とする登録第959187号商標(昭和44年5月13日登録出願、昭和47年4月17日設定登録、以下「件外商標」という。)は、相互に連合商標となっているところ、<1>本件第1商標の専用使用権が設定された商品「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」は、商標法上、医療補助品に属する商品とするのが相当であり、<2>件外商標は「薬剤」に使用権が及ばず、その実際の使用商品「アクリノールを浸潤させたガーゼ」が商標法上の薬剤に属するとしても、その使用は使用権のない商品への使用であり、<3>リバテープ製薬株式会社(以下「リバテープ製薬」という。)の使用に係る商標「リバテープW」並びに玉川衛材株式会社(以下「玉川衛材」という。)の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件第1~第3商標とは、物理的に同一ではなく、社会通念上も同一の商標とは認め難く、<4>本件第1~第3商標につき、リバテープ製薬、玉川衛材ほか数社に通常使用権を許諾しているとの事実を証する証拠の提出がないから、被請求人(原告)の提出に係る証拠によっては、本件各審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(原告)、専用実施権者又は通常使用権者のいずれかによって、指定商品「薬剤」について、本件第1~第3商標又はこれと相互に連合商標となっている件外商標が使用されていることを認めることができず、したがって、本件第1~第3商標は、商標法50条(平成8年法律第68号による改正前のもの)により、いずれも指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

各審決の理由中、本件第1~第3商標及び件外商標が相互に連合商標であったとの認定、件外商標は「薬剤」に使用権が及ばず、その使用商品の「アクリノールを浸潤させたガーゼ」が商標法上の薬剤に属するとしても、その使用は使用権のない商品への使用であるとの判断は認める。

各審決は、殺菌ガーゼ付救急絆創膏が、商標法上、薬剤ではなく医療補助品に属するとの誤った判断をし(取消事由3)、商標「リバテープW」並びに商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件第1~第3商標とが同一の商標とは認めがたいとの誤った判断をし(取消事由2)、さらに、本件第1~第3商標につき、リバテープ製薬、玉川衛材等に通常使用権を許諾している事実を認めなかった事実誤認があり(取消事由1)、その結果、本件各審判請求の登録前3年以内に日本国内において、原告、専用実施権者又は通常使用権者のいずれかによって、指定商品「薬剤」について、本件第1~第3商標又はこれと相互に連合商標となっている件外商標が使用されていることを認めることができないとの誤った判断をしたものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(使用権許諾に係る事実誤認)

原告は、リバテープ製薬との間で、昭和54年5月9日、本件第1商標につき、商品の範囲を殺菌ガーゼ付救急絆創膏として専用使用権を設定する旨の契約を締結し、さらに平成元年3月8日、その期間更新契約の締結をして、いずれも専用使用権設定登録を経たが、このほかに、次の各使用権許諾契約を締結した。

したがって、各審決が、本件第1~第3商標につき、リバテープ製薬、玉川衛材に通常使用権を許諾しているとの事実を認めなかったことは、事実誤認に当たる。

(1)  リバテープ製薬との間で、上記専用使用権設定契約及び期間更新契約の締結と同時に、リバテープ製薬が殺菌ガーゼ付救急絆創膏に使用する商標「リバテープ」に対し、本件第1商標に基づく禁止権の不行使を約する旨の契約を締結したところ、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、該禁止権不行使の契約は、本件第3商標についての使用権許諾契約に移行した。

リバテープ製薬は、該使用権許諾契約に基づき、予告登録日以前から、殺菌ガーゼ付救急絆創膏(アクリノールガーゼ付救急絆創膏)について「リバテープW」との商標を使用している。

(2)  玉川衛材との間で、昭和47年9月21日に商品を殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)として、商標「リバガーゼ」の通常使用権許諾契約を締結し、昭和57年4月24日及び平成4年3月19日にその期間更新契約を締結した。この契約は、件外商標について使用権許諾をするとの形式であるが、後記のとおり、商標法上薬剤に属するアクリノールガーゼを対象商品として、医療補助品に属する「ガーゼ」を指定商品とする件外商標の使用権許諾をすることは実態に符合せず、該契約は、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、本件第3商標についての通常使用権許諾契約に移行したものというべきである。

玉川衛材は、該通常使用権許諾契約に基づき、予告登録日以前から、アクリノールガーゼについて「新リバガーゼA」、「SHINRIBAGAUZE-A」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」との商標を使用している。

(3)  玉川衛材との間で、昭和47年9月頃、玉川衛材が殺菌消毒液に使用する商標「ホワイトリバ液」に対し、本件第1商標に基づく禁止権の不行使を約する旨の契約を締結したところ、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、該禁止権不行使の契約は、本件第3商標についての使用権許諾契約に移行した。

玉川衛材は、該使用権許諾契約に基づき、予告登録日以前から、殺菌消毒液について「ホワイトリバ液」との商標を使用している。

2  取消事由2(同一商標の使用と認めなかった判断の誤り)

各審決は、リバテープ製薬の使用に係る商標「リバテープW」並びに玉川衛材の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件第1~第3商標とは、物理的に同一ではなく、社会通念上も同一の商標とは認め難いと判断したが、それは誤りである。

すなわち、商標「リバテープW」、「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」等の「W」、「A」、「F」等の文宇字部分は単なる付記的な語であり、また「テープ」の語は、幅が狭く長い紐を意味する外来語として親しまれているから、これをテープ状の商品の商標の一部として用いるときは、該商標の「テープ」の文字部分は、取引者・需要者に対し、商品の品質又は形状を表示するものと理解・認識させるに止まるものである。また、「ガーゼ」の文字部分は商品の普通名称を表示しているにすぎない。そうすると、いずれの商標においても、自他商品の識別機能を果たす部分は「リバ」の文字部分にあるというべきである。したがって、これらの商標の使用は、本件第1商標又は本件第3商標の使用にほかならない。

このことは、商標「ホワイトリバ液」についても同様で、「ホワイト」の文字部分は商品の色彩を、「液」の文字部分は商品の剤型を表示するものであるから、自他商品の識別機能を果たす部分は「リバ」の文字部分にあるというべきであり、したがって、商標「ホワイトリバ液」の使用は本件第3商標の使用といわなければならない。

3  取消事由3(殺菌ガーゼ付救急絆創膏が薬剤ではないとした判断の誤り)

各審決は、殺菌ガーゼ付救急絆創膏につき、医者が処置する程のことのない軽度の切り傷、すり傷等に対し、家庭において殺菌消毒、創傷面の保護をするものとして、一般家庭向けを主として販売されていることを理由に挙げ、該商品が、薬事法上は医薬品として製造承認され、薬効があるとしても、その販売場所、用途及び使用目的等を総合勘案すれば、商標法上は、薬剤ではなく医療補助品に属するものと判断したが、それは誤りである。

すなわち、商標法における商品の区分は、商標登録出願の際の出願人の便宜及び審査の便宜を図るという行政的な見地からなされているものであり、ある商品が指定商品中のいずれに属するかは、商品の性質、薬事法等の取扱い、同業他社の同種商品の市場における認識等を総合して、実質的に判断すべきである。

しかるところ、リバテープ製薬が本件第1商標又は本件第3商標を使用している商品は、アクリノールガーゼ付救急絆創膏であり、これは、ガーゼを、創傷保護剤に分類されるアクリノールの0.5%溶液に浸した後、乾燥、裁断して粘着テープに貼着し、セパレータで覆って1枚包装としたものであって、薬事法上、医薬品としての製造承認を得ているものである。このように、アクリノールガーゼ付救急絆創膏は、通常の絆創膏と異なるものであり、その用途において、例えばパウダー型の殺菌消毒薬と異なるところはない。そして、アクリノールガーゼ付救急絆創膏のこのような用途、性質や、それが薬事法上、医薬品に分類されていること、製薬会社、流通業者、小売店(薬局)等はそれらのことを知悉していること等を考慮すると、アクリノールガーゼ付救急絆創膏は、商標法上、医療補助品ではなく、薬剤に属するものというべきである。

以上のことは、玉川衛材が本件第3商標を使用しているアクリノールガーゼについても同様であり、これはグリセリンを加えたアクリノール水溶液にガーゼを浸し、ガラス瓶などの容器に収納したものであって、薬事法上、医薬品としての製造承認を得ているものであり、商標法上、医療補助品ではなく、薬剤に属するものというべきである。

第4  被告の反論の要点

各審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。

1  取消事由1(使用権許諾に係る事実誤認)について

原告がリバテープ製薬との間で、本件第1商標につき商品の範囲を殺菌ガーゼ付救急絆創膏とする専用使用権設定契約及びその期間更新契約を締結し、専用使用権設定登録を経たこと、原告がリバテープ製薬との間で、殺菌ガーゼ付救急絆創膏に使用する商標「リバテープ」に対し、本件第1商標に基づく禁止権不行使の契約を締結したこと、リバテープ製薬が予告登録日以前から、アクリノールガーゼ付救急絆創膏について「リバテープW」との商標を使用していること、原告が玉川衛材との間で、商品を殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)とする商標「リバガーゼ」の通常使用権許諾契約及びその期間更新契約を締結したが、その契約は、件外商標について使用権許諾をするとの形式であること、玉川衛材が予告登録日以前から、アクリノールガーゼについて「新リバガーゼA」、「SHINRIBAGAUZE-A」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」との商標を使用していること、玉川衛材が予告登録日以前から、殺菌消毒液について「ホワイトリバ液」との商標を使用していることは認める。その余の事実は争う。

なお、原告は、玉川衛材との間で、昭和47年9月21日に商品をアクリノールガーゼとして、件外商標の通常使用権許諾契約を締結し、その後、昭和57年4月24日及び平成4年3月19日の期間更新契約を経たが、該契約は、現在に至るも件外商標の使用権許諾契約のままで、本件第1~第3商標の使用権許諾契約とされていない。このことは、原告が、該使用権許諾契約によって、商標「リバガーゼ」を薬剤について使用許諾しているのではないことを意味するとともに、アクリノールガーゼが薬剤ではなく医療補助品であり、原告もそのように考えていることを示すものである。

2  取消事由2(同一商標の使用と認めなかった判断の誤り)について

原告は、リバテープ製薬の使用に係る商標「リバテープW」並びに玉川衛材の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」、「リバガーゼF」及び「ホワイトリバ液」につき、それぞれ自他商品の識別機能を果たす部分が「リバ」の文字部分にあるとの理由で、リバテープ製薬又は玉川衛材によるこれらの商標の使用が、本件第1商標又は本件第3商標の使用にほかならないと主張する。

しかしながら、商標の不使用取消審判において、「登録商標の使用」をしているといえるためには、使用している商標が、当該登録商標と類似しているのみでは足らず、物理的同一性及び社会通念上同一性のあることを要するものであり、その同一性の範囲については、平成8年法律第68号による改正後の商標法50条1項がこれを明らかにしたところである。同改正後の商標法50条1項が、直接本件第1~第3審判事件に適用されるものではないが、同改正は、その同一性の範囲に変更をもたらすものではなく、従前の基準に沿って物理的同一性及び社会通念上同一性のある商標の範囲を明示した意義を有するものである。

しかるところ、リバテープ製薬又は玉川衛材の使用している前示各商標は、それぞれ同書、同大、同間隔で書され、一連に称呼することのできる「リバテープ」、「SHINRIBAGAUZE-A」、「リバガーゼ」、「ホワイトリバ」の部分が一体不可分に構成されているものとみるべきだから、「RIBA」の欧文字を横書きしてなる構成の本件第1商標及び「リバ」の片仮名文字を横書きしてなる構成の本件第3商標とは称呼及び観念を異にすることが明らかであって、社会通念上同一性のある商標ということはできない。

3  取消事由3(殺菌ガーゼ付救急絆創膏が薬剤ではないとした判断の誤り)について

原告は、殺菌ガーゼ付救急絆創膏(アクリノールガーゼ付救急絆創膏)及び殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)が、商標法上、医療補助品ではなく、薬剤に属するものと主張する。

しかしながら、商標法上の商品の区分は、当該商品に係る取引者、需要者の認識判断を基準として、商標法の観点から決せられるべきであって、たとえ、薬事法上は医薬品とされているからといって、商標法上の商品区分において、直ちに薬剤に属するものということはできない。このことは、薬事法上は医薬品に含まれるガーゼ、脱脂綿等が商標法上は医療補助品とされている(平成3年通商産業省令第70号による改正前の商標法施行規則別表)ことによっても明らかである。

しかるところ、殺菌ガーゼ付救急絆創膏や殺菌消毒ガーゼは、アクリノール等の日本薬局方に収録された成分を含有するものであるが、軽度の外傷を家庭内で処理するのが目的であり、薬局等においては薬事法上の医薬部外品と同じ取扱いがされており、さらに、その取引者や需要者においては衛生用品として認識されている。したがって、その用途、取引形態、取引者及び需要者の認識からみて、殺菌ガーゼ付救急絆創膏及び殺菌消毒ガーゼは、商標法上、薬剤ではなく、医療補助品に含まれるものというべきである。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(使用権許諾に係る事実誤認)について

(1)  原告が、リバテープ製薬との間で、昭和54年5月9日に本件第1商標につき、商品の範囲を殺菌ガーゼ付救急絆創膏として専用使用権を設定する旨の契約を締結し、平成元年3月8日にその期間更新契約の締結をして、いずれも専用使用権設定登録を経たこと、また、該専用使用権設定契約及び期間更新契約の締結と同時に、リバテープ製薬が殺菌ガーゼ付救急絆創膏に使用する商標「リバテープ」に対し、本件第1商標に基づく禁止権の不行使を約する旨の契約を締結したこと、リバテープ製薬が、予告登録日以前から、殺菌ガーゼ付救急絆創膏(アクリノールガーゼ付救急絆創膏)について「リバテープW」との商標を使用していることは、当事者間に争いがない。

しかるところ、原告は、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、前示商標「リバテープ」に対する本件第1商標に基づく禁止権の不行使の契約が、本件第3商標についての使用権許諾契約に移行した旨主張するが、本件第1商標に基づく禁止権の不行使の契約と、本件第3商標についての使用権許諾契約とは、もとより異なる法律効果を有する別個の契約であって、本件第3商標の設定登録がされたからといって、前者が当然に後者に移行することはあり得ない。そして、原告は、リバテープ製薬との間で本件第3商標についての使用権許諾契約が締結されたことに関する具体的事実の主張をせず、また、該契約締結の事実を認めるに足りる証拠も全く存在しないから、原告とリバテープ製薬との間に該契約が存在する事実を認めることはできない。

(2)  原告が、玉川衛材との間で、昭和47年9月21日に商品を殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)として、商標「リバガーゼ」の通常使用権許諾契約を締結し、昭和57年4月24日及び平成4年3月19日にその期間更新契約を締結したこと、該契約が、件外商標について使用権許諾をするとの形式であること、玉川衛材が予告登録日以前から、アクリノールガーゼについて「新リバガーゼA」、「SHINRIBAGAUZE-A」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リベガーゼF」との商標を使用していることは当事者間に争いがない。

しかるところ、原告は、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、該契約が本件第3商標についての通常使用権許諾契約に移行したものであると主張する。しかしながら、前示のとおり、該契約は、件外商標について使用権許諾をするとの形式であり、該契約に係る昭和47年9月21日付契約書(甲第9号証の1)の文言からも、アクリノールガーゼが商標法上薬剤に属するかどうかにかかわらず、件外商標についての使用権許諾のみを契約の内容とするものと認められるところ、件外商標についての使用権許諾契約と、本件第3商標についての使用権許諾契約とが異なる法律効果を有する別個の契約であることはいうまでもなく、本件第3商標の設定登録がされたからといって、前者が当然に後者に移行することはあり得ない。そして、原告は、玉川衛材との間で本件第3商標についての通常使用権許諾契約が締結されたことに関する具体的事実の主張をせず、また、該契約締結の事実を認めるに足りる証拠も全く存在しないのみならず、前示のとおり、本件第3商標の設定登録がされた後の平成4年3月19日に、件外商標についての使用権許諾を内容とする前示契約の期間更新契約が締結されていることに鑑みても、原告と玉川衛材との間に、本件第3商標についての通常使用権許諾契約が存在するとの事実を認めることはできない。

(3)  玉川衛材が予告登録日以前から、殺菌消毒液について「ホワイトリバ液」との商標を使用していることは、当事者間に争いがない。

しかるところ、原告は、玉川衛材との間で、昭和47年9月頃、玉川衛材が殺菌消毒液に使用する商標「ホワイトリバ液」に対し、本件第1商標に基づく禁止権の不行使を約する旨の契約を締結したところ、平成2年9月21日に本件第3商標の設定登録がされたことに伴い、該禁止権不行使の契約は、本件第3商標についての使用権許諾契約に移行したと主張する。しかしながら、仮に、主張のとおり、本件第1商標に基づく禁止権の不行使を約する旨の契約が、原告と玉川衛材との間に締結されたとしても、該禁止権の不行使を約する旨の契約が、本件第3商標の設定登録がされたからといって、当然に本件第3商標についての使用権許諾契約に移行するものではないことは、前示(1)で述べたと同様であり、しかも、原告は、玉川衛材との間で本件第3商標についての使用権許諾契約が締結されたことに関する具体的事実の主張をせず、また、該契約締結の事実を認めるに足りる証拠も全く存在しないから、原告とリバテープ製薬との間に該契約が存在する事実を認めることはできない。

(4)  したがって、原告が、リバテープ製薬との間で、昭和54年5月9日に本件第1商標につき専用使用権を設定する旨の契約を締結し、平成元年3月8日にその期間更新契約の締結をして、いずれも専用使用権設定登録を経たことのほか、原告が本件第1~第3商標について、リバテープ製薬又は玉川衛材に対し通常使用権を許諾しているとの事実を認めることはできず、各審決のこれと同旨の判断に誤りはない。

そうすると、本件第1~第3商標又はこれらと連合商標の関係にある件外商標について、原告の主張する実施権の設定・許諾が認められるのは、「薬剤」に使用権が及ばないことを原告が自認している件外商標に係るものを除けば、リバテープ製薬に対する前示本件第1商標についての専用使用権のみである。

2  取消事由2(同一商標の使用と認めなかった判断の誤り)について

リバテープ製薬が、予告登録日以前から、殺菌ガーゼ付救急絆創膏(アクリノールガーゼ付救急絆創膏)について「リバテープW」との商標を使用していることは、前示のとおりである。

ところで、商標の不使用取消審判において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が現に使用している商標が、当該登録商標と社会通念上同一と認められる範囲のものであれば、その構成上全く同一でなくとも、なお当該「登録商標の使用」をしているものと認めることができる。このことは、平成8年法律第68号による改正後の商標法50条1項が明文をもって定めたところであるが、同改正後の同項が適用される訳ではない本件不使用取消審判の請求についても同様に解すべきである。

しかるところ、リバテープ製薬の製造に係るアクリノールガーゼ付救急絆創膏の紙製容器の写真(甲第7号証)によれば、リバテープ製薬が現に使用する前示商標は、多少の図案化を伴う同書体、かつ、同大の「リバテープ」の片仮名文字を同間隔で横書きし、それに続けて、やはり多少の図案化を伴う書体で、横幅が該片仮名文字の概ね2倍である欧文字の「W」を書してなる構成であることが認められ、外観上、「リバテープ」の文字部全と「W」の文字部分とが、片仮名文字と欧文字の差異に加えて、その大きさの相違があるために、それぞれ独立した態様とみることができるものの、「リバテープ」の文字部分については、「リバ」及び「テープ」の部分がそれぞれ独立しているとみられるような態様ではない。さらに、「リバテープ」の文字部分から自然に生ずる「リバテープ」との称呼は、長音を含めて5音により構成され、特に冗長であったり、発音が困難であったりすることはなく、一連に称呼できるものであるものと認められる。そうすると、「テープ」の語が幅が狭く長い紐状のものを意味する外来語として親しまれていることは原告主張のとおりであるとしても、前示外観及び称呼の特徴からみて、「リバテープ」の文字部分は、取引者・需要者に一体として理解・認識されるものと解するのが相当であり、これをテープ状の殺菌ガーゼ付救急絆創膏の商標に用いたからといって、「リバ」の部分と「テープ」の部分とに分離され、後者が商品の品質又は形状を表示するものとのみ理解・認識されるということはできない。

他方、本件第1商標は、別紙商標目録1記載のとおり、ゴシック体の「RIBA」の欧文字を横書きしてなる構成であり、その全体から「リバ」との称呼が生じるものと認められる。なお、本件第1商標から何らかの観念が生ずるものと認めるに足りる証拠はない。

そうすると、リバテープ製薬が現に使用する商標は、片仮名文字で表示され、「リバテープ」との称呼を生じるのに対し、本件第1商標は、欧文字(ローマ字)によって表示され、「リバ」との称呼を生じるものであって、社会通念上、両者が同一であるとは認め難く(なお、前示のとおり、称呼に明瞭な差異があるから、平成8年法律第68号による改正後の商標法50条1項が、社会通念上同一と認められる商標として例示する「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に当たらないことはいうまでもない。)、各審決のこの部分の判断に誤りはない。

したがって、リバテープ製薬による商標「リバテープW」の使用が本件第1商標の使用に当たるものということはできない。

3  以上のとおり、原告の審決取消事由1及び同2のうち、リバテープ製薬の使用に係る商標「リバテープW」と本件第1商標とが同一の商標とは認めがたいとした点の誤りを主張する部分は理由がない。

そうすると、その余の審決取消事由の成否につき判断するまでもなく、本件各審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(原告)、専用実施権者又は通常使用権者のいずれかによって、指定商品「薬剤」について、本件第1~第3商標又はこれと相互に連合商標となっている他の登録商標が使用されていることを認めることができないとした各審決の結論は正当であって、その余の審決取消事由の成否はこれに影響を及ぼさず、また、他に各審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成5年審判第18773号

審決

アメリカ合衆国 カリフォルニア 94608-2916 エミリービル、ホートン ストリート4560

請求人 カイロン コーポレション

大阪府大阪市中央区城見1丁目2番27号 クリスタルタワー15階

山本秀策特許事務所

代理人弁理士 山本秀策

東京都中央区日本橋本町3丁目5番1号

被請求人 三共株式会社

東京都港区虎ノ門1-1-23 ウンピン虎ノ門ビル3階 鈴木特許事務所

代理人弁理士 鈴木守三郎

上記当事者間の登録第 45277号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第 45277号商標の指定商品中「薬剤」についてはその登録は、取り消す。

審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

1.本件登録第45277号商標(以下、「本件商標」という。)は、「RIBA」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品一切」を指定商品として、明治43年12月30日登録出願、同44年3月25日に設定登録され、その後、昭和6年4月9日、同25年9月25日、同46年7月10日、同56年5月30日及び平成3年6月26日の5回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

2.請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出している。

(1)本件商標は、その指定商品中「薬剤」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用の規定により、その登録は取り消されるべきものである。

(2)請求人は、「RIBA」ブランドを第1類の全商品に使用するべくこの商品を指定商品とし「RIBA」の文字を商標とする商標登録出願を既に行っている(甲第1号証)。

請求人(出願人)は、登録第45277号及び同第2262819号の登録商標を引用され、該出願が商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由通知を受理したので、指定商品を「薬剤」に補正したが依然として上記登録商標が存在するため該出願について拒絶査定がされたので、該拒絶査定に対する審判を請求している者である。

したがって、請求人は、本件審判の請求人適格を有する。

(3)被請求人は、答弁書において乙第1号証乃至同第11号証を根拠に種々述べているが「使用の事実」を証するに至っておらず、本件商標の登録の取消を免れ得ない。

商標登録の取消を免れるためには、被請求人は商標法第50条により、登録商標(若しくはその連合登録商標)の使用を以下の三つの条件のもとで立証しなければならない。

<1>薬剤についての使用であること。

<2>商標権者である被請求人自ら、専用使用権者若しくは通常使用権者が使用すること。

<3>継続して3年以上日本国内において使用していること。

しかるに、被請求人は、上記<1>、<2>及び<3>の全条件を満たすに十分な立証をなしえていない。

登録商標「RIBA」が現存するらしいこと、及びリバテープ社に専用使用権が設定された事実は、乙第1号証から認められるが、その使用権の範囲は「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」のみであって、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実はない。乙第5号証の1から商品リバデープの製造を承認したらしいことは見てとれるが、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実は、乙第5号証の2及び同3のいずれからも明らかでない。つまり、上記条件<1>及び<3>を欠いている。

つぎに、登録商標「リバガーゼ」及び「リバ」が現存するらしいことは、乙第2号証及び同第4号証からそれぞれ認められるが、被請求人の主張する「玉川衞材株式会社(以下、「玉川衞材社」という。)に通常使用権を設定し現在も使用させている。」旨の根拠はない。なぜなら、乙第2号証によれば、玉川衛材社への通常使用権の設定は、昭和57年4月17日をもって期限が切れており、しかもその後、更新されている様子も、そして許諾の事実を証する何らかの契約があった様子もない。さらにその使用権の範囲は「殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)」のみであって、薬剤こついての使用であるかどうかも不詳である。つまり、上記全条件<1>、<2>及び<3>を欠いている。

商品の区分第1類においては、商品ばんそうこうは「医療補助品」の範疇に属し、「薬剤」に属するものではない。

被請求人は答弁書において、「被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すとおり、殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)である」と述べている。しかしながら救急絆創膏はそれにアクリノールを塗布してなるか否かにかかわらず、商標法上の商品「ばんそうこう」に該当する。

「商品及び役務の区分解説(特許庁商標課編)」第31頁によると、「ばんそうこう」等の商品は主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部も含まれる、と記載されており、それゆえ「ガーゼ」や「ばんそうこう」、「包帯液」などは、薬事法上の医薬品であっても商標法上の商品としては「薬剤」ではなく「医療補助品」に属するものである。このような例は他にも例えば「水歯磨き」に防腐性の成分が含まれ、又「薬用せっけん」には殺菌成分を含むものがあるが、これらが「薬剤」に属さないとされる場合などに見られる。

乙第6号証の1乃至同3及び乙第7号証の1乃至同2は、何れも前記玉川衛材社に関する資料であるが、いずれも6年以上も昔の資料であって、玉川衛材社が「通常使用権者である。」という上記条件<2>を欠き(既述のように乙第2号証より明らか)、かつ、それが「薬剤についての使用である。」という上記条件<1>及び「継続して3年以上使用している。」という上誌条件<3>をも欠いている。

残りの乙第8号証乃至同第11号証は、いずれも既述のように、被請求人(本件商標権者)とは使用権設定・許諾関係のない無関係な玉川衛材社の提供する殺菌消毒剤及びアリノール付救急絆創膏に関する資料にすぎず、従って、本件取消審判事件とは何の関係もない。

このように、被請求人は、不使用による登録取消を免れるための商標法第50条に規定する要件を充足する立証をなし得ておらず、よって、登録商標の取消を免れ得ない。

(4)被請求人は、使用に係る商品は「薬剤」に属する旨述べているが、さきに述べたとおり乙第5号証の2、同第6号証の2、同3及び同第7号証の2に示された商品は「薬剤」に含まれず、「医療補助品」の範疇に属するものである。

商標法上の商品の分類は、各産業界における商品名の分類を商標の観点からなされたものである。

請求人は、被請求人が提出した乙第18号証と同一の書証である特許庁商標課編「商品及び役務区分解説」を提出する(甲第2号証)。

甲第2号証には、商品及び役務の区分第5類の“1薬剤”の概念には、(1)薬事法の規定に基づく“医薬品”の大部分、(2)同法にいう“医療補助品”の一部、(3)農薬の大部分が含まれるとし、さらに(2)に関し、「なお、薬事法の定義によれば、“医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられるガーゼ、脱脂綿等も入るが、これらは本類3に属し、この概念には含まれない。」と解説されている(第27頁参照)。

他方、上記解説中「本類3」と示されたいわゆる医療補助品の範疇に該当し「ガーゼ、脱脂綿、ばんそうこう」等が含まれる、商品及び役務の区分第5類の“3医療用腕環医療用油紙~包帯液防虫紙”における「商品及び役務区分解説」中の説明では、「これらは主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部(例えば、ガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。」と解説されている(第31頁参照)。

これは、商標法上の商品「薬剤」の範疇は、厚生省による医薬品等の製造承認の区分けに拘束されず、たとえ薬事法上で“医薬品”として製造承認されたものであっても、商品の分類では「医療補助品」に属することがあることを意味する。

具体的には、乙第5号証の2において使用しているとされた商品である救急絆創膏においては、実際の取引の場における商品流通の実体から見れば、その成分としてアクリノール等の日本薬局方に収録された成分を含有しているか否かにかかわらず、あるいは薬事法上、医薬品として製造承認を受けているか否かにかかわらず、商標法上の見地から見れば、いずれとも一般に家庭でも使われる衛生用品に該当し、商標法上の分類では「薬剤」ではなく「医療補助品」の範疇に属するというのが妥当である。

乙第15号証においても、「救急絆創膏は、薬効分類上、創傷保護剤に分類される医薬品と非医薬品である医療用具とに大別される」(第157頁)、「救急絆創膏は、(中略)、効能・効果いわゆる適応症が明確でないことから、医薬品としての製造承認を得ることが難しくなってきているためである」(第157頁)、「救急絆創膏は一般的に、絆創膏にガーゼ等布状のものが付いており、殺菌消毒剤が含有されている」(第159頁)、「救急絆創膏は医療現場でも使われているが、軽度の外傷を家庭内で処理するのが目的である」(第160頁)等と表記されている。このことからも、救急絆創膏はその用途、販売形態、販売経路、取引者の階層等商標が付された商品の流通の実態を考慮すれば、どんな商品、成分のものでも家庭内で使用される衛生用品として需要者、取引者に認識され、商標法上「薬剤」の範疇に属さないことが明らかである。

乙第6号証の2及び同第7号証の2において使用していると主張している“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付のガーゼ”、といった商品にあっても同様で、商品の用途、販売形態等を考慮すると、一般家庭において傷を治すのに使用するため、一般需用者が薬店等で購入するのが主であり、商標法上の分類としては「医療補助品」の範疇に属するとするのが妥当である。このことは、施行規則別表中に「ガーゼ」、「包帯」等同様の販売形態を有する商品が「医療補助品」の範疇に属する商品として列記されている事実があり、また、いわゆる創傷保護剤は、その成分中にアクリノールを含有するか否かにかかわらず「医療補助品」の範疇に属することからも、“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付きのガーゼ”、もこれらと同じ類似商品群に属し、商標としての観点からは「薬剤」の概念には含まれないことが容易に理解できる。

被請求人は、件外登録第959187号商標「リバガーゼ」を出願審査時に指定商品を「ガーゼ」に減縮した経緯を述べていうが、商標法施行規則別表中には「ガーゼ」が医療補助品の範疇に含まれる商品として例示されていて、商品「ガーゼ」を指定商品として登録された該件外登録商標は、医療補助品に属する「ガーゼ」のみを指定商品とすることが公権的に支持されたものである。よって、該件外登録商標の存在は、出願審査時の手続補正の経緯がいかなる理由であっても、取消に係る商品「薬剤」の使用について論議すべき事実は何ら存在しない。

そこで、被請求人が、本件商標の使用の事実を立証するために提出した証拠方法を検討する。

乙第5号証の2の写真は、商品「リバテープW」の包装用箱とみられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」とはいえない。それだけでなく該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記された「製造元リバテープ社」が、その当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。このことから、この証拠書類からは登録商標の使用があったとは認められない。

乙第5号証の3は、リバテープ社による売上伝票と見られる。ここには品名の欄に「リバテープW」等の文字が見受けられるが、本件商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおりリバテープ社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第5号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書の写しであるが、既述のとおり、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、商標法上の商品「薬剤」の使用に関し何ら証拠能力を有さない。

このことから、標章「リバテープW」に関し、乙第5号証を総合的に考察しても本件商標の使用は証明されない。

乙第6号証の2及び同3の写真は、商品「新リバガーゼA」の、また、乙第7号証の2の写真は、商品「リバガーゼF」の包装容器及び内容物と見受けられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」とはいえない。また、該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記載された「玉川衛材社」がその当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。

乙第16号証は、玉川衛材社による売上台帳とみられる。ここには商品名・企画の欄に「リバガーゼF」等の文字が見受けられるが、この商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおり玉川衛材社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第6号証の1及び乙第7号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書等の写しであるが、乙第5号証の1と同様、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、これは使用に係る商品が「薬剤」に属することの証明にならない。

このことから、標章「新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」に関し、乙第6~7号証及び同第16号証を総合的に考察しても本件商標の使用は何ら証明されない。

残余の乙各号証は、いずれも登録原簿、文献類等であり、本件商標の使用の証明に何ら関与せず、本件商標の使用の証左にならない。

してみると、被請求人提出の乙各号証は、いずれも本件商標をその請求に係る指定商品において、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等が使用しているものであることを証明しているといえない。

3.被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第18号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)被請求人は、本件商標に関し本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と連合する登録商標を、継続して「薬剤」について使用しているものであるから、請求人の主張は全く理由がないものと主張する。

即ち、被請求人は下記の登録商標を所有するものである。

登録商標(A)「RIBA」 登録第45277号

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(C)「リバエース/LIBAACE」

登録第2127260号

登録商標(D)「リバ」 登録第2262819号

そして、上記の登録商標はそれぞれが「RIBA」及び「リバ」を要部と認定され、互いに連台する商標として登録されているものであって、これらを不使用による取消審判によって取り消す理由としては、そのいずれもが指定商品について全く使用されない場合に限ると規定されているところである。

被請求人は、次のとおり登録商標を使用しているものである。

被請求人は、登録商標(A)「RIBA」についてリバテープ社に専用使用権を設定し、また登録商標(D)「リバ」については通常使用権を許諾して、殺菌ガーゼ付絆創膏について「リバテープ」なる商標態様での専用使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

また、被請求人は、登録商標(B)「リバガーゼ」及び登録商標(D)「リバ」について、玉川衛材社ほか数社に通常使用権を許諾し、殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼに限る。)について通常使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

そして、専用使用権者兼通常使用権者リバテープ社が使用する「リバテープ」及び通常使用権者玉川衛材社ほかが使用する「リバガーゼ」の自他商品を識別する機能を果たす部分は、当然のことながら「リバ」の文字であること明らかであるから、本件商標の使用と認定され得るところである。

したがって、本件商標と連合する登録商標が、專用使用権者及び通常使用権者により使用されていることは明白である。

被請求人は、次のとおり本件商標に係る指定商品について使用しているものである。

被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すどおり殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)であるから、本件商標に係る指定商品の「薬剤」について使用しているものである。

以上のとおり、本件商標及び連合登録商標をその指定商品中「薬剤」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において専用使用権者及び通常使用権者により使用しているものであるから、本件商標の登録を商標法第50条第1項の規定により取り消すことはできない。

(2)請求人は、被請求人が提出した答弁書によっては、本件商標をその指定商品中「薬剤」については、なお使用されているとはいえないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきであると主張している。

そこで、被請求人は、本件商標が指定商品「薬剤」について、通常使用権者により本件審判請求の登録前3年以内に日本国において継続して使用されていることを証明する。

<1>「薬剤」の使用について

本件商標は、「RIBA」の文字よりなり、第1類の全商品を指定商品として出願し、下記の登録商標と連合する商標として登録されている。

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(C)「リバエース/LIBAACE」登録第2127260号

登録商標(D)「リバ」 登録第2262819号

このことは、本件商標「RIBA」から生ずる「リバ」の称呼と同一の称呼である「リバ」が登録商標(B)及び(C)の要部であり、換言すれば、登録商標(D)が、それぞれの商標の要部をなすことを意味するものである。

上記の連合登録商標の中で登録商標(B)「リバガーゼ」は、その審査過程において商標構成中に「ガーゼ」の文字を有するから「ガーゼ」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じるおそれがあるとの拒絶理由通知に基づき指定商品を「ガーゼ」に限定せざるを得ない事情があった。

即ち、本来、本件に係わる使用商品は「薬剤」(アクリノール)を浸潤させた「ガーゼ」であるために、指定商品については「アクリノールを全体に浸潤させたガーゼ、その他のガーゼ」と補正すべきところを、指令のとおり単に「ガーゼ」と商品補正したものである。

しかし、本件の商品は、証拠書類により理解できるように、薬剤をガーゼ全体に浸潤させ分離不能の状態で一体となったものであり、医療補助品としての単なる「ガーゼ」とは品質・用途・効能が全く異質なものである。

請求人は前記使用商品についての理解不足なところがあるが、これはアメリカ合衆国では肌に密着させる商品を使用したことがない慣習によるものであって、我が国においては、古くから肌に貼着する薬が皮膚を通じて筋肉まで浸透し患部を治癒する治療方法として薬を紙片または布片に塗布した「膏薬」が愛用されてきたことは周知である。

これは、現在においても噴霧式、塗布式などよりは薬剤を患部により長時間保持させることのできる方法として普通に親しまれている。

そして、この膏薬は当然のことながら「薬剤」として認識されているものであり、件外他社の登録商標「サロンパス」等の紙片または布片に塗布した湿布薬も当然のことながら「薬剤」として認められていることからみれば、本件の使用商品は明らかに「薬剤」である。

したがって、請求人の主張は理解不足のところがあり当然理由のないものである。

厚生省では、この種商品の製造承認の区分けとして「医薬品」、「医薬部外品」の区別を設けているが、本件商標は「医薬品」としての製造承認を受けているものである(乙第6号証の1)。

その内容は、前記乙第6号証の1及び乙第5号証の2で明らかなとおり、日本薬局方では「局所用殺菌・消毒薬」として掲載されている「薬剤のアクリノール」を、乙第6号証の1にあっては、日本薬局方グリセリン、乙第5号証の2にあっては、日本薬局方マクロゴール400などで溶解したアクリノール溶液をガーゼに浸潤させ、それをそのまま、又は乾燥させた後に支持部材である粘着テープで支持して、患部に貼付することによって切り傷、すり傷、化膿性創傷等を治癒させる商品である。

しかも、同時に添付した乙第5号証「'93一般用医薬品データブック」(廣川書店発行)157頁によれば、「救急絆創膏」もまたアクリノール含有のものであれば「医薬品」の範疇に入るものとし、単なる医療補助品とは区別されている。

したがって、本件商品を総合的に勘案すれば、正に「薬剤」であって且つ使用商標は上記した商品について現実に使用していることは事実であるから、本件商標は「薬剤」について使用しているものである。

<2>通常使用権者の使用である。

被請求人は登録商標(D)が登録になるまでは、本件商標に基づいてリバテープ社に対して「リバテープ」なる態様での使用を、また、玉川衛材社に対しては、取敢えず登録商標(B)に基づいて「リバガーゼ」なる態様での使用をそれぞれ承認し、登録商標(D)の登録後は、それぞれ前記の商標態様で引き続きその使用を承認しているものである。

そして、「リバ」の文字に担体である「ガーゼ」ないし支持部材である「テープ」の文字を付記したに過ぎないこれらの商標態様のそれぞれの要部は、全て登録商標(D)と同一であり、したがって、それぞれの商品について登録商標(D)が使用されていると認められるのが相当である。

<3>継続して3年以上日本国内において使用している。

乙第5号証の2乃至同第11号証及び同第16号証のとおり、登録商標(D)は、本件審判請求の登録前即ち平成5年11月15日前3年はもとより現在も継続して使用されており、正規の使用権設定登録はないが、本件商標と連合する登録商標が通常使用権者により使用されていることは明白である。

(3)本件商標の指定商品は、「医薬品」として厚生省の認可を受けている。

従来から、商標法上の商品としては「医薬品」の判断について不明確な部分があり、例えば「薬剤」と「医薬部外品」、「医薬部外品」と「化粧品」、「薬剤」と「化粧品」、そして「薬剤」と「医療補助品」等の認定が複雑である。

したがって、特許庁では、本件商品のように単なる「ガーゼ」或いは「テープ」ではない特殊な商品についての認定は、現物またはカタログ、さらに他の証拠物件(厚生省の認可等)等を参照して判断しているところである。

裁判所においても、商品の帰属については、商品の品質、原材料、効能、用途及び形状などを総合勘案して判断しているはずである。

本件商品は、いずれの観点から観察しても「薬剤」である。単なる「ガーゼ」及び「テープ」てあれば、正に傷口を複うための医療補助品であろうが、薬剤を浸潤させた本件商品は創傷保護のためのみではなく、殺菌・消毒により創傷治癒を目的とするものであり、「ガーゼに浸潤させたアクリノール殺菌消毒剤」である。

請求人は、使用者と被請求人との関係が明らかでないと主張しているが、その関係については前回の答弁書で説明しているところであり、改めて主張する必要はないが、商標の使用者は被請求人の通常使用権者であることは間違いのない事実である。

また、使用している商標「リバテープ」、「リバガーゼ」、「新リバガーゼ」及び「SHINRIBAGAUZE」の各商標は、その構成文字から「リバ」及び「RIBA」の文字が自他商品の識別力を果たす部分と認識されるものであり、本件商標の使用態様は「商標の識別性に影響を与えることなく、構成部分に変更を加えて使用する場合」といえるものである。

4.そこで判断するに、本件商標と相互に連合商標となっている登録第959187号商標は、「リバガーゼ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「ガーゼ」を指定商品として、昭和44年5月13日登録出願、同47年4月17日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2127260号商標は、「リバエース」の片仮名文字と「LIBAACE」の欧文字を二段に併記してなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和55年12月26日登録出願、平成1年3月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2262819号商標は、「リバ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和57年4月28日登録出願、平成2年9月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

つぎに、本件商標には、商品「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」について専用使用権が設定登録されているところ、該商品は、その表示よりすれば、医者が処置する程のことのない軽度の切り傷、すり傷等を家庭において殺菌消毒及び該創傷面を保護するものとして一般家庭向けを主として販売されているものと認められるものであるから、たとえ該商品が、薬事法との関係では医薬品として製造承認されたものであり、かつ、薬効をも有するものであるとしても、その販売場所、用途及び使用目的等を総合勘案すれば、商標法上においては医療補助品に属する商品であるというのが相当である。

そして、本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第959187号商標の指定商品は、登録出願から設定登録に至る迄の経緯はさておき、第1類に属する「医療補助品」に含まれる「ガーゼ」のみであり、薬剤には使用権が及ばず、たとえ実際の使用商品「アクリノールを浸潤させたガーゼ」が商標法上の薬剤に属するものであるとしても、その使用は使用権のない商品への使用である。

また、件外リバテープ製薬株式会社の使用に係る商標「リバテープW」及び件外玉川衛材株式会社の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第2127260号商標及び同第2262819号商標とは、物理的に同一でなく、社会通念上も同一の商標とは認め難いものである。

さらに、本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている登録商標についての通常使用権の存否に関して争いがあるのにもかかわらず、被請求人は、本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記各登録商標について、リバテープ製薬株式会社、玉川衛材株式会社及び他数社に通常使用権を許諾していると主張するのみで、該事実を証する何等の証拠の提出もないものである。

してみれば、本件商標は、これらの事実を総合勘案すると、被請求人の提出に係る前記乙各号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(被請求人)、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」について、本件商標又は本件商標と相互に連合商標となっている他の登録商標が使用されていることを認めることができない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

平成9年4月21日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

平成5年審判第18789号

審決

アメリカ合衆国 カリフォルニア 94608-2916 エミリービル、ホートン ストリート 4560

請求人 カイロン コーボレーション

大阪府大阪市中央区城見1丁目2番27号 クリスタルタワー15階山本秀策特許事務所

代理人弁理士 山本秀策

東京都中央区日本橋本町3丁目5番1号

被請求人 三共株式会社

東京都港区虎ノ門1-1-23 ウンピン虎ノ門ビル3階 鈴木特許事務所

代理人弁理士 鈴木守三郎

上記当事者間の登録第2127260号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第2127260号商標の指定商品中「薬剤」についてはその登録は、取り消す。

審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

1. 本件登録第2127260号商標(以下、「本件商標」という。)は、「リバエース」の片仮名文字と「LIBAACE」の欧文字を二段に併記してなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和55年12月26日登録出願、平成1年3月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2. 請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出している。

(1)本件商標は、その指定商品中「薬剤」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。

(2)請求人は、「RIBA」ブランドを第1類の全商品に使用するべくこの商品を指定商品とし「RIBA」の文字を商標とする商標登録出願を既に行っている(甲第1号証)。

請求人(出願人)は、該出願が本件商標と相互に連合商標となっている登録第45277号及び同第2262819号の登録商標を引用され、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由通知を受理したので、指定商品を「薬剤」に補正したが依然として上記登録商標が存在するため該出願について拒絶査定がされたので、該拒絶査定に対する審判を請求している者である。

したがって、請求人は、本件審判の請求人適格を有する。

(3)被請求人は、答弁書において乙第1号証乃至同第11号証を根拠に種々述べているが、「使用の事実」を証するに至っておらず、本件商標の登録の取消を免れ得ない。

商標登録の取消を免れるためには、被請求人は商標法第50条により、登録商標(若しくはその連合登録商標)の使用を以下の三つの条件のもとで立証しなければならない。

<1>薬剤についての使用であること。

<2>商標権者である被請求人自ら、専用使用権者若しくは通常使用権者が使用すること。

<3>継続して3年以上日本国内において使用していること。

しかるに、被請求人は、上記<1>、<2>及び<3>の全条件を満たすに十分な立証をなしえていない。

登録商標「RIBA」が現存するらしいこと、及びリバテープ社に専用使用権が設定ざれた事実は、乙第1号証から認められるが、その使用権の範囲は「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」のみであって、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実はない。乙第5号証の1から商品リバテープの製造を承認したらしいことは見てとれるが、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実は、乙第5号証の2及び同3のいずれからも明らかでない。つまり、上記条件<1>及び<3>を欠いている。

つぎに、登録商標「リバガーゼ」及び「リバ」が現存するらしいことは、乙第2号証及び同第4号証からそれぞれ認められるが、被請求人の主張する「玉川衛材株式会社(以下、「玉川衛材社」という。)に通常使用権を設定し現在も使用させている。」旨の根拠はない。なぜなら、乙第2号証によれば、玉川衛材社への通常使用権の設定は、昭和57年4月17日をもって期限が切れており、しかもその後、更新されている様子も、そして許諾の事実を証する何ちかの契約があった様子もない。さらにその使用権の範囲は「殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)」のみであって、薬剤についての使用であるかどうかも不詳である。つまり、上記全条件<1>、<2>及び<3>を欠いている。

商品の区分第1類においては、商品ばんそうこうは「医療補助品」の範疇に属し、「薬剤」に属するものではない。

被請求人は答弁書において、「被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すとおり、殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)である」と述べている。しかしながら救急絆創膏はそれにアクリノールを塗布してなるか否かにかかわらず、商標法上の商品「ばんそうこう」に該当する。

「商品及び役務の区分解説(特許庁商標課編)」第31頁によると、「ばんそうこう」等の商品は主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部も含まれる、と記載されており、それゆえ「ガーゼ」や「ばんそうこう」、「包帯液」などは、薬事法上の医薬品であっても商標法上の商品としては「薬剤」ではなく「医療補助品」に属するものである。このような例は他にも例えば「水歯磨き」に防腐性の成分が含まれ、又「薬用せっけん」には殺菌成分を含むものがあるが、これらが「薬剤」に属さないとされる場合などに見られる。

乙第6号証の1乃至同3及び乙第7号証の1乃至同2は、何れも前記玉川衛材社に関する資料であるが、いずれも6年以上も昔の資料であって、玉川衛材社が「通常使用権者である。」という上記条件<2>を欠き(既述のように乙第2号証より明らか)、かつ、それが「薬剤についての使用である。」という上記条件<1>及び「継続して3年以上使用している。」という上記条件<3>をも欠いている。

残りの乙第8号証乃至同第11号証は、いずれも既述のように、被請求人(本件商標権者)とは使用権設定・許諾関係のない無関係な玉川衛材社の堤供する殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏に関する資料にすぎず、従って、本件取消審判事件とは何の関係もない。

このように、被請求人は、不使用による登録取消を免れるための商標法第50条に規定する要件を充足する立証をなし得ておらず、よって、登録商標の取消を免れ得ない。

(4)被請求人は、使用に係る商品は「薬剤」に属する旨述べているが、さきに述べたとおり乙第5号証の2、同第6号証の2、同3及び同第7号証の2に示された商品は「薬剤」に含まれず、「医療補助品」の範疇に属するものである。

商標法上の商品の分類は、各産業界における商品名の分類を商標の観点からなされたものである。

請求人は、被請求人が提出した乙第18号証と同一の書証である特許庁商標課編「商品及び役務区分解説」を提出する(甲第2号証)。

甲第2号証には、商品及び役務の区分第5類の“1薬剤”の概念には、(1)薬事法の規定に基づく“医薬品”の大部分、(2)同法にいう“医療補助品”の一部、(3)農薬の大部分が含まれるとし、さらに(2)に関し、「なお、薬事法の定義によれば、“医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられるガーゼ、脱脂綿等も入るが、これらは本類3に属し、この概念には含まれない。」と解説されている(第27頁参照)。

他方、上記解説中「本類3」と示されたいわゆる医療補助品の範疇に該当し「ガーゼ、脱脂綿、ばんそうこう」等が含まれる、商品及び役務の区分第5類の“3医療用腕環医療用油紙~包帯液防虫紙”における「商品及び役務区分解説」中の説明では、「これらは主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部(例えば、ガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。」と解説されている(第31頁参照)。

これは、商標法上の商品「薬剤」の範疇は、厚生省による医薬品等の製造承認の区分けに拘束されず、たとえ薬事法上で“医薬品”として製造承認されたものであっても、商品の分類では「医療補助品」に属することがあることを意味する。

具体的には、乙第5号証の2において使用しているとされた商品である救急絆創膏においては、実際の取引の場における商品流通の実体から見れば、その成分としてアクリノール等の日本薬局方に収録された成分を含有しているか否かにかかわらず、あるいは薬事法上、医薬品として製造承認を受けているか否かにかかわらず、商標法上の見地から見れば、いずれとも一般に家庭でも使われる衛生用品に該当し、商標法上の分類では「薬剤」ではなく「医療補助品」の範疇に属するというのが妥当である。

乙第15号証においても、「救急絆創膏は、薬効分類上、創傷保護剤に分類される医薬品と、非医薬品である医療用具とに大別される」(第157頁)、「救急絆創膏は、(中略)、効能・効果いわゆる適応症が明確でないことから、医薬品としての製造承認を得ることが難しくなってきているためである」(第157頁)、「救急絆創膏は一般的に、絆創膏にガーゼ等布状のものが付いており、殺菌消毒剤が含有されている」(第159頁)、「救急絆創膏は医療現場でも使われているが、軽度の外傷を家庭内で処理するのが目的である」(第160頁)等と表記されている。このことからも、救急絆創膏はその用途、販売形態、販売経路、取引者の階層等商標が付された商品の流通の実態を考慮すれば、どんな商品、成分のものでも家庭内で使用される衛生用品として需要者、取引者に認識され、商標法上「薬剤」の範疇に属さないことが明らかである。

乙第6号証の2及び同第7号証の2において使用していると主張している“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付のガーゼ”、といった商品にあっても同様で、商品の用途、販売形態等を考慮すると、一般家庭において傷を治すのに使用するため、一般需用者が薬店等で購入するのが主であり、商標法上の分類としては「医療補助品」の範疇に属するとするのが妥当である。このことは、施行規則別表中に「ガーゼ」、「包帯」等同様の販売形態を有する商品が「医療補助品」の範疇に属する商品として列記されている事実があり、また、いわゆる創傷保護剤は、その成分中にアクリノールを含有するか否かにかかわらず「医療補助品」の範疇に属することからも、“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付きのガーゼ”、もこれらと同じ類似商品群に属し、商標としての観点からは「薬剤」の概念には含まれないことが容易に理解できる。

被請求人は、件外登録第959187号商標「リバガーゼ」を出願審査時に指定商品を「ガーゼ」に減縮した経緯を述べているが、商標法施行規則別表中には「ガーゼ」が医療補助品の範疇に含まれる商品として例示されていて、商品「ガーゼ」を指定商品として登録された該件外登録商標は、医療補助品に属する「ガーゼ」のみを指定商品とすることが公権的に支持されたものである。よって、該件外登録商標の存在は、出願審査時の手続補正の経緯がいかなる理由であっても、取消に係る商品「薬剤」の使用について論議すべき事実は何ら存在しない。

そこで、被請求人が、本件商標の使用の事実を立証するために提出した証拠方法を検討する。

乙第5号証の2の写真は、商品「リバテープW」の包装用箱とみられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」、とはいえない。それだけでなく該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記された「製造元リバテープ社」が、その当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。このことがら、この証拠書類からは登録商標の使用があったとは認められない。

乙第5号証の3は、リバテープ社による売上伝票と見られる。ここには品名の欄に「リバテープW」等の文字が見受けられるが、本件商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおりリバテープ社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第5号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書の写しであるが、既述のとおり、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、商標法上の商品「薬剤」の使用に関し何ら証拠能力を有さない。

このことから、標章「リバテープW」に関し、乙第5号証を総合的に考察しても本件商標の使用は証明されない。

乙第6号証の2及び同3の写真は、商品「新リバガーゼA」の、また、乙第7号証の2の写真は、商品「リバガーゼF」の包装容器及び内容物と見受けられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」とはいえない。また、該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記載された「玉川衛材社」がその当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。

乙第16号証は、玉川衛材社による売上台帳とみられる。ここには商品名・企画の欄に「リバガーゼF」等の文字が見受けられるが、この商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおり玉川衛材社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第6号証の1及び乙第7号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書等の写しであるが、乙第5号証の1と同様、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、これは使用に係る商品が「薬剤」に属することの証明にならない。

このことから、標章「新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」に関し、乙第6~7号証及び同第16号証を総合的に考察しても本件商標の使用は何ら証明されない。

残余の乙各号証は、いずれも登録原簿、文献類等であり、本件商標の使用の証明に何ら関与せず、本件商標の使用の証左にならない。

してみると、被請求人提出の乙各号証は、いずれも本件商標をその請求に係る指定商品において、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等が使用しているものであることを証明しているといえない。

3.被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第18号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)被請求人は、本件商標に関し本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と連合する登録商標を、継続して「薬剤」について使用しているものであるから、請求人の主張は全く理由がないものと主張する。

即ち、被請求人は下記の登録商標を所有するものである。

登録商標(A)「RIBA」 登録第45277号

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(C)「リバエース/LIBAACE」

登録第21277260号

登録商標(D)「リバ」 登録第2262819号

そして、上記の登録商標はそれぞれが「RIBA」及び「リバ」を要部と認定され、互いに連合する商標として登録されているものであって、これらを不使用による取消審判によって取り消す理由としては、そのいずれもが指定商品について全く使用されない場合に限ると規定されているところである。

被請求人は、次のとおり登録商標を使用しているものである。

被請求人は、登録商標(A)「RIBA」についてリバテープ社に専用使用権を設定し、また登録商標(D)「リバ」については通常使用権を許諾して、殺菌ガーゼ付絆倉膏について「リバテープ」なる商標態様での専用使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

また、被請求人は、登録商標(B)「リバガーゼ」及び登録商標(D)「リバ」について、玉川衛材社ほか数社に通常使用権を許諾し、殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼに限る。)について通常使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

そして、専用使用権者兼通常使用権者リバテープ社が使用する「リバテープ」及び通常使用権者玉川衛材社ほかが使用する「リバガーゼ」の自他商品を識別する機能を果たす部分は、当然のことながら「リバ」の文字であること明らかであるから、本件商標の使用と認定され得るところである。

したがって、本件商標と連合する登録商標が、専用使用権者及び通常使用権者により使用されていることは明白である。

被請求人は、次のとおり本件商標に係る指定商品について使用しているものである。

被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すとおり殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)であるから、本件商標に係る指定商品の「薬剤」について使用しているものである。

以上のとおり、本件商標及び連合登録商標をその指定商品中「薬剤」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において専用使用権者及び通常使用権者により使用しているものであるから、本件商標の登録を商標法第50条第1項の規定により取り消すことはできない。

(2)請求人は、被請求人が提出した答弁書によっては、本件商標をその指定商品中「薬剤」については、なお使用されているとはいえないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきであると主張している。

そこで、被請求人は、本件商標が指定商品「薬剤」について、通常使用権者により本件審判請求の登録前3年以内に日本国において継続して使用されていることを証明する。

<1>「薬剤」の使用について。

本件商標は、「リバエース/LIBAACE」の文字よりなり、第1類の全商品を指定商品として出願し、下記の登録商標と連合する商標として登録されている。

登録商標(A)「RIBA」 登録第45277号

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(D)「リバ」 登録第2262819号

このことは、本件商標「リバエース/LIBAACE」の要部が登録商標(D)と同じであることを意味するものである。

上記の連合登録商標の中で登録商標(B)「リバガーゼ」は、その審査過程において商標構成中に「ガーゼ」の文字を有するから「ガーゼ」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じるおそれがあるとの拒絶理由通知に基づき指定商品を「ガーゼ」に限定せざるを得ない事情があった。

即ち、本来、本件に係わる使用商品は「薬剤」(アクリノール)を浸潤させた「ガーゼ」であるために、指定商品については「アクリノールを全体に浸潤させたガーゼ、その他のガーゼ」と補正すべきところを、指令のとおり単に「ガーゼ」と商品補正したものである。

しかし、本件の商品は、証拠書類により理解できるように、薬剤をガーゼ全体に浸潤させ分離不能の状態で一体となったものであり、医療補助品としての単なる「ガーゼ」とは品質・用途・効能が全く異質なものである。

請求人は前記使用商品についての理解不足なところがあるが、これはアメリカ合衆国では肌に密着させる商品を使用したことがない慣習によるものであって、我が国においては、古くから肌に貼着する薬が皮膚を通じて筋肉まで浸透し患部を治癒する治療方法として薬を紙片または布片に塗布した「膏薬」が愛用されてきたことは周知である。

これは、現在においても噴霧式、塗布式などよりは薬剤を患部により長時間保持させることのできる方法として普通に親しまれている。

そして、この膏薬は当然のことながら「薬剤」として認識されているものであり、件外他社の登録商標「サロンパス」等の紙片またば布片に塗布した湿布薬も当然のことながら「薬剤」として認められていることからみれば、本件の使用商品は明らかに「薬剤」である。

したがって、請求人の主張は理解不足のところがあり当然理由のないものである。

厚生省では、この種商品の製造承認の区分けとして「医薬品」、「医薬部外品」の区別を誤けているが、本件商標は「医薬品」としての製造承認を受けているものである(乙第6号証の1)。

その内容は、前記乙第6号証の1及び乙第5号証の2で明らかなとおり、日本薬局方では「局所用殺菌・消毒薬」として掲載されている「薬剤のアクリノール」を、乙第6号証の1にあっては、日本薬局方グリセリン、乙第5号証の2にあっては、日本薬局方マクロゴール400などで溶解したアクリノール溶液をガーゼに浸潤させ、それをそのまま、又は乾燥させた後に支持部材である粘着テープで支持して、患部に貼付することによって切り傷、すり傷、化膿性創傷等を治癒させる商品である。

しかも、同時に添付した乙第5号証「'93一般用医葉品データブック」(廣川書店発行)157頁によれば、「救急絆創膏」もまたアクリノール含有のものであれば「医薬品」の範疇に入るものとし、単なる医療補助品とは区別されている。

したがって、本件商品を総合的に勘案すれば、正に「薬剤」であって且つ使用商標は上記した商品について現実に使用していることは事実であるから、本件商標は「薬剤」について使用しているものである。

<2>通常使用権者による使用である。

被請求人は登録商標(D)が登録になるまでは、本件商標に基づいてリバテープ社に対して「リバテープ」なる態様での使用を、また、玉川衛材社に対しては、取敢えず登録商標(B)に基づいて「リバガーゼ」なる態様での使用をそれぞれ承認し、登録商標(D)の登録後は、それぞれ前記の商標態様で引き続きその使用を承認しているものである。

そして、「リバ」の文字に担体である「ガーゼ」ないし支持部材である「テープ」の文字を付記したに過ぎないこれらの商標態様のそれぞれの要部は、全て登録商標(D)と同一であり、したがって、それぞれの商品について登録商標(D)が使用されていると認められるのが相当である。

<3>継続して3年以上日本国内において使用している。

乙第5号証の2乃至同第11号証及び同第16号証のとおり、登録商標(D)は、本件審判請求の登録前即ち平成5年11月15日前3年はもとより現在も継続して使用されており、正規の使用権設定登録はないが、本件商標と連合する登録商標が通常使用権者により使用されていることは明白である。

(3)本件商標の指定商品は、「医薬品」として厚生省の認可を受けている。

従来から、商標法上の商品としては「医薬品」の判断について不明確な部分があり、例えば「薬剤」と「医薬部外品」、「医薬部外品」と「化粧品」、「薬剤」と「化粧品」、そして「薬剤」と「医療補助品」等の認定が複雑である。

したがって、特許庁では、本件商品のように単なる「ガーゼ」或いは「テープ」ではない特殊な商品についての認定は、現物またはカタログ、さらに他の証拠物件(厚生省の認可等)等を参照して判断しているところである。

裁判所においても、商品の帰属については、商品の品質、原材料、効能、用途及び形状などを総合勘案して判断しているはずである。

本件商品は、いずれの観点から観察しても「薬剤」である。単なる「ガーゼ」及び「テープ」であれば、正に傷口を覆うための医療補助品であろうが、薬剤を浸潤させた本件商品は創傷保護のためのみではなく、殺菌・消毒により創傷治癒を目的とするものであり、「ガーゼに浸潤させたアクリノール殺菌消毒剤」である。

請求人は、使用者と被請求人との関係が明らかでないと主張しているが、その関係については前回の答弁書で説明しているところであり、改めて主張する必要はないが、商標の使用者は被請求人の通常使用権者であることは間違いのない事実である。

また、使用している商標「リバテープ」、「リバガーゼ」、「新リバガーゼ」及び「SHINRIBAGAUZE」の各商標は、その構成文字から「リバ」及び「RIBA」の文字が自他商品の識別力を果たす部分と認識されるものであり、本件商標の使用態様は「商標の識別性に影響を与えることなく、構成部分に変更を加えて使用する場合」といえるものである。

4.そこで判断するに、本件商標と相互に連合商標となっている登録第45277号商標は、「RIBA」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品一切」を指定商品として、明治43年12月30日登録出願、同44年3月25日に設定登録され、その後、5回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第959187号商標は、「リバガーゼ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「ガーゼ」を指定商品として、昭和44年5月13日登録出願、同47年4月17日に設定登録され、その後、2回に亘り更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2262819号商標は、「リバ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和57年4月28日登録出願、平成2年9月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

つぎに、本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第45277号商標には、商品「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」について専用使用権が設定登録されているところ、その表示よりすれば該商品は、医者が処置する程のことのない軽度の切り傷、すり傷等を家庭において殺菌消毒及び該創傷面を保護するものとして一般家庭向けを主として販売されているものと認められるであるから、たとえ該商品が、薬事法との関係では医薬品として製造承認されたものであり、かつ、薬効を有するものであるとしても、その販売場所、用途及び使用目的等を総合勘案すれば、商標法上においては医療補助品に属する商品であるというのが相当である。

そして、本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第959187号商標「リバガーゼ」の指定商品は、その登録出願から設定登録に至る迄の経緯はさておき、第1類に属する「医療補助品」に含まれる「ガーゼ」のみであり、薬剤には使用権が及ばず、たとえ実際の使用商品「アクリノールを浸潤させたガーゼ」が商標法上の薬剤に属するものであるとしても、その使用は使用権のない商品への使用である。

また、件外リバテープ製薬株式会社の使用に係る商標「リバテープW」及び件外玉川衛材株式会社の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新リバガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第45277号商標及び同第2262819号商標とは、物理的に同一でなく、社会通念上も同一の商標とは認め難いものである。

さらに、本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている登録商標の通常使用権の存否について争いがあるのにもかかわらず、被請求人は、本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記各登録商標について、リバテープ製薬株式会社、玉川衛材株式会社及び他数社に通常使用権を許諾していると主張するのみで、該事実を証する何等の証拠の提出もないものである。

してみれば、本件商標は、これらの事実を総合勘案すると、被請求人の提出に係る前記乙各号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(被請求人)、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」について、本件商標又は本件商標と相互に連合商標となっている他の登録商標が使用されていることを認めることができない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

平成9年4月21日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

平成5年審判第18795号

審決

アメリカ合衆国 カリフォルニア 94608-2916 エミリービル、ホートン ストリート 4560

請求人 カイロン コーポレーション

大阪府大阪市中央区城見1丁目2番27号 クリスタルタワー15階山本秀策特許事務所

代理人弁理士 山本秀策

東京都中央区日本橋本町3丁目5番1号

被請求人 三共株式会社

東京都港区虎ノ門1-1-23 ウンピン虎ノ門ビル3階 鈴木特許事務所

代理人弁理士 鈴木守三郎

上記当事者間の登録第2262819号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第2262819号商標の指定商品中「薬剤」についてはその登録は、取り消す。

審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

1.本件登録第2262819号商標(以下、「本件商標」という。)は、「リバ」の片仮名文字横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和57年4月28日登録出願、平成2年9月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2.請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出している。

(1)本件商標は、その指定商品中「薬剤」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。

(2)請求人は、「RIBA」プランドを第1類の全商品に使用するべくこの商品を指定商品とし「RIBA」の文字を商標とする商標登録出願を既に行っている(甲第1号証)。

請求人(出願人)は、登録第45277号商標及び本件商標を引用され、該出願が、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由通知を受理したので、指定商品を「薬剤」に補正したが依然として上記登録商標が存在するため該出願について拒絶査定がされたので、該拒絶査定に対する審判を請求している者である。

したがって、請求人は、本件審判の請求人適格を有する。

(3)被請求人は、答弁書において乙第1号証乃至同第11号証を根拠に種々述べているが、「使用の事実」を証するに至っておらず、本件商標の登録の取消を免れ得ない。

商標登録の取消を免れるためには、被請求人は商標法第50条により、登録商標(若しくはその連合登録商標)の使用を以下の三つの条件のもとで立証しなければならない。

<1>薬剤についての使用であること。

<2>商標権者である被請求人自ら、専用使用権者若しくは通常使用権者が使用すること。

<3>継続して3年以上日本国内において使用していること。

しかるに、被請求人は、上記<1>、<2>及び<3>の全条件を満たすに十分な立証をなしえていない。

登録商標「RIBA」が現存するらしいこと、及びリバテープ社に専用使用権が設定された事実は、乙第1号証から認められるが、その使用権の範囲は「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」のみであって、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実はない。乙第5号証の1から商品リバテープの製造を承認したらしいことは見てとれるが、それが薬剤であるという事実及び継続して3年以上使用されているという事実は、乙第5号証の2及び同3のいずれからも明らかでない。つまり、上記条件<1>及び<3>を欠いている。

つぎに、登録商標「リバガーゼ」及び「リバ」が現存するらしいことは、乙第2号証及び同第4号証からそれぞれ認められるが、被請求人の主張する「玉川衛材株式会社(以下、「玉川衛材社」という。)に通常使用権を設定し現在も使用させている。」旨の根拠はない。なぜなら、乙第2号証によれば、玉川衛材社への通常使用権の設定は、昭和57年4月17日をもって期限が切れており、しかもその後、更新されている様子も、そして許諾の事実を証する何らかの契約があった様子もない。さらにその使用権の範囲は「殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼ)」のみであって、薬剤についての使用であるかどうかも不詳である。つまり、上記全条件<1>、<2>及び<3>を欠いている。

商品の区分第1類においては、商品ばんそうこうは「医療補助品」の範疇に属し、「薬剤」に属するものではない。

被請求人は答弁書において、「被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すとおり、殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)である」と述べている。しかしながら救急絆創膏はそれにアクリノールを塗布してなるか否かにかかわらず、商標法上の商品「ばんそうこう」に該当する。

「商品及び役務の区分解説(特許庁商標課編)」第31頁によると、「ばんそうこう」等の商品は主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部も含まれる、と記載されており、それゆえ「ガーゼ」や「ばんそうこう」、「包帯液」などは、薬事法上の医薬品であっても商標法上の商品としては「薬剤」ではなく「医療補助品」に属するものである。このような例は他にも例えば「水歯磨き」に防腐性の成分が含まれ、又「薬用せっけん」には殺菌成分を含むものがあるが、これらが「薬剤」に属さないとされる場合などに見られる。

乙第6号証の1乃至同3及び乙第7号証の1乃至同2は、何れも前記玉川衛材社に関する資料であるが、いずれも6年以上も昔の資料であって、玉川衛材社が「通常使用権者である。」という上記条件<2>を欠き(既述のように乙第2号証より明らか)、かつ、それが「薬剤についての使用である。」という上記条件<1>及び「継続して3年以上使用している。」という上記条件<3>をも欠いている。

残りの乙第8号証乃至同第11号証は、いずれも既述のように、被請求人(本件商標権者)とは使用権設定・許諾関係のない無関係な玉川衛材社の提供する殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏に関する資料にすぎず、従って、本件取消審判事件とは何の関係もない。

このように、被請求人は、不使用による登録取消を免れるための商標法第50条に規定する要件を充足する立証をなし得ておらず、よって、登録商標の取消を免れ得ない。

(4)被請求人は、使用に係る商品は「薬剤」に属する旨述べているが、さきに述べたとおり乙第5号証の2、同第6号証の2、同3及び同第7号証の2に示された商品は「薬剤」に含まれず、「医療補助品」の範疇に属するものである。

商標法上の商品の分類は、各産業界における商品名の分類を商標の観点からなされたものである。

請求人は、被請求人が提出した乙第18号証と同一の書証である特許庁商標課編「商品及び役務区分解説」を提出する(甲第2号証)。

甲第2号証には、商品及び役務の区分第5類の“1薬剤”の概念には、(1)薬事法の規定に基づく“医薬品”の大部分、(2)同法にいう“医療補助品”の一部、(3)農薬の大部分が含まれるとし、さらに(2)に関し、「なお、薬事法の定義によれば、“医薬品”の中には通常、衛生用品と考えられるガーゼ、脱脂綿等も入るが、これらは本類3に属し、この概念には含まれない。」と解説されている(第27頁参照)。

他方、上記解説中「本類3」と示されたいわゆる医療補助品の範疇に該当し「ガーゼ、脱脂綿、ばんそうこう」等が含まれる、商品及び役務の区分第5類の“3医療用腕環医療用油紙~包帯液防虫紙”における「商品及び役務区分解説」中の説明では、「これらは主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部(例えば、ガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。」と解説されている(第31頁参照)。

これは、商標法上の商品「薬剤」の範疇は、厚生省による医薬品等の製造承認の区分けに拘束されず、たとえ薬事法上で“医薬品”として製造承認されたものであっても、商品の分類では「医療補助品」に属することがあることを意味する。

具体的には、乙第5号証の2において使用しているとされた商品である救急絆創膏においては、実際の取引の場における商品流通の実体から見れば、その成分としてアクリノール等の日本薬局方に収録された成分を含有しているか否かにかかわらず、あるいは薬事法上、医薬品として製造承認を受けているか否かにかかわらず、商標法上の見地から見れば、いずれとも一般に家庭でも使われる衛生用品に該当し、商標法上の分類では「薬剤」ではなく「医療補助品」の範疇に属するというのが妥当である。

乙第15号証においても、「救急絆創膏は、薬効分類上、創傷保護剤に分類される医薬品と非医薬品である医療用具とに大別される」(第157頁)、「救急絆創膏は、(中略)、効能・効果いわゆる適応症が明確でないことから、医薬品としての製造承認を得ることが難しくなってきているためである」(第157頁)、「救急絆創膏は一般的に、絆創膏にガーゼ等布状のものが付いており、殺菌消毒剤が含有されている」(第159頁)、「救急絆創膏は医療現場でも使われているが、軽度の外傷を家庭内で処理するのが目的である」(第160頁)等と表記されている。このことからも、救急絆創膏はその用途、販売形態、販売経路、取引者の階層等商標が付された商品の流通の実態を考慮すれば、どんな商品、成分のものでも家庭内で使用される衛生用品として需要者、取引者に認識され、商標法上「薬剤」の範疇に属さないことが明らかである。

乙第6号証の2及び同第7号証の2において使用していると主張している“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付のガーゼ”、といった商品にあっても同様で、商品の用途、販売形態等を考慮すると、一般家庭において傷を治すのに使用するため、一般需用者が薬店等で購入するのが主であり、商標法上の合類としては「医療補助品」の範疇に属するとするのが妥当である。このことは、施行規則別表中に「ガーゼ」、「包帯」等同様の販売形態を有する商品が「医療補助品」の範疇に属する商品として列記されている事実があり、また、いわゆる創傷保護剤は、その成分中にアクリノールを含有するか否かにかかわらず「医療補助品」の範疇に属することからも、“アクリノールを浸潤させたガーゼ”、“粘着シート付きのガーゼ”、もこれらと同じ類似商品群に属し、商標としての観点からは「薬剤」の概念には含まれないことが容易に理解できる。

被請求人は、件外登録第959187号商標「リバガーゼ」を出願審査時に指定商品を「ガーゼ」に減縮した経緯を述べているが、商標法施行規則別表中には「ガーゼ」が医療補助品の範疇に含まれる商品として例示されていて、商品「ガーゼ」を指定商品として登録された該件外登録商標は、医療補助品に属する「ガーゼ」のみを指定商品とすることが公権的に支持されたものである。よって、該件外登録商標の存在は、出願審査時の手続補正の経緯がいかなる理由であっても、取消に係る商品「薬剤」の使用について論議すべき事実は何ら存在しない。

そこで、被請求人が、本件商標の使用の事実を立証するために提出した証拠方法を検討する。

乙第5号証の2の写真は、商品「リバテープW」の包装用箱とみられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」とはいえない。それだけでなく該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記された「製造元リバテープ社」が、その当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。このことから、この証拠書類からは登録商標の使用があったとは認められない。

乙第5号証の3は、リバテープ社による売上伝票とみられる。ここには品名の欄に「リバテープW」等の文字が見受けられるが、本件商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおりリバテープ社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第5号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書の写しであるが、既述のとおり、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、商標法上の商品「薬剤」の使用に関し何ら証拠能力を有さない。

このことから、標章「リバテープW」に関し、乙第5号証を総合的に考察しても本件商標の使用は証明されない。

乙第6号証の2及び同3の写真は、商品「新リバガーゼA」の、また、乙第7号証の2の写真は、商品「リバガーゼF」の包装容器及び内容物と見受けられるところ、該商品は既述のとおり商標法上の商品「薬剤」とはいえない。また、該商品はその使用時期が不明である上、その包装用箱に記載された「玉川衛材社」がその当時被請求人と如何なる関係にあったかが明らかにされていない。

乙第16号証は、玉川衛材社による売上台帳とみられる。ここには商品名・企画の欄に「リバガーゼF」等の文字が見受けられるが、この商標をどのような商品について使用しているかを示す客観的証拠がない。また、上述したとおり玉川衛材社と被請求人との関係が明らかにされていない。

乙第6号証の1及び乙第7号証の1は、医薬品製造承認申請書或いは医薬品製造承認書等の写しであるが、乙第5号証の1と同様、薬事法上の「医薬品」と商標法上の分類における「薬剤」とは合致しないことが明らかであって、これは使用に係る商品が「薬剤」に属することの証明にならない。

このことから、標章「新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」に関し、乙第6~7号証及び同第16号証を総合的に考察しても本件商標の使用は何ら証明されない。

残余の乙各号証は、いずれも登録原簿、文献類等であり、本件商標の使用の証明に何ら関与せず、本件商標の使用の証左にならない。

してみると、被請求人提出の乙各号証は、いずれも本件商標をその請求に係る指定商品において、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等が使用しているものであることを証明しているといえない。

3.被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第18号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)被請求人は、本件商標に関し本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と連合する登録商標を、継続して「薬剤」について使用しているものであるから、請求人の主張は全く理由がないものと主張する。

即ち、被請求人は下記の登録商標を所有するものである。

登録商標(A)「RIBA」 登録第45277号

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(C)「リバエース/LIBAACE」

登録第2127260号

登録商標(D)「リバ」 登録第2262819号

そして、上記の登録商標はそれぞれが「RIBA」及び「リバ」を要部と認定され、互いに連合する商標として登録されているものであって、これらを不使用による取消審判によって取り消す理由としては、そのいずれもが指定商品について全く使用されない場合に限ると規定されているところである。

被請求人は、次のとおり登録商標を使用しているものである。

被請求人は、登録商標(A)「RIBA」についてリバテープ社に専用使用権を設定し、また登録商標(D)「リバ」については通常使用権を許諾して、殺菌ガーゼ付絆創膏について「リバテープ」なる商標態様での専用使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

また、被請求人は、登録商標(B)「リバガーゼ」及び登録商標(D)「リバ」について、玉川衛材社ほか数社に通常使用権を許諾し、殺菌消毒ガーゼ(アクリノールガーゼに限る。)について通常使用権者による使用を認め現在使用されているものである。

そして、専用使用権者兼通常使用権者リバテープ社が使用する「リバテープ」及び通常使用権者玉川衛材社ほかが使用する「リバガーゼ」の自他商品を識別する機能を果たす部分は、当然のことながら「リバ」の文字であること明らかであるから、本件商標の使用と認定され得るところである。

したがって、本件商標と連合する登録商標が、専用使用権者及び通常使用権者により使用されていることは明白である。

被請求人は、次のとおり本件商標に係る指定商品について使用しているものである。

被請求人の専用使用権者及び通常使用権者が使用する商品は、乙各号証で示すとおり殺菌消毒剤及びアクリノール付救急絆創膏(薬剤を塗布し、薬効を主目的とするもの。)であるから、本件商標に係る指定商品の「薬剤」について使用しているものである。

以上のとおり、本件商標及び連合登録商標をその指定商品中「薬剤」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において専用使用権者及び通常使用権者により使用しているものであるから、本件商標の登録を商標法第50条第1項の規定により取り消すことはできない。

(2)請求人は、被請求人が提出した答弁書によっては、本件商標をその指定商品中「薬剤」については、なお使用されているとはいえないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきであると主張している。

そこで、被請求人は、本件商標が指定商品「薬剤」について、通常使用権者により本件審判請求の登録前3年以内に日本国において継続して使用されていることを証明する。

<1>「薬剤」の使用について。

本件商標は、「リバ」の文字よりなり、第1類の全商品を指定商品として出願し、下記の登録商標と連合する商標として登録されている。

登録商標(A)「RIBA」 登録第45277号

登録商標(B)「リバガーゼ」 登録第959187号

登録商標(C)「リバエース/LIBAACE」登録第2127260号

このことは、登録商標(A)から生ずる「リバ」の称呼と同一の称呼である「リバ」が、登録商標(B)及び(C)の要部であり、換言すれば、本件商標「リバ」が、それぞれの商標の要部をなすことを意味するものである。

上記の連合登録商標の中で登録商標(B)「リバガーゼ」は、その審査過程において商標構成中に「ガーゼ」の文字を有するから「ガーゼ」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じるおそれがあるとの拒絶理由通知に基づき指定商品を「ガーゼ」に限定せざるを得ない事情があった。

即ち、本来、本件に係わる使用商品は「薬剤」(アクリノール)を浸潤させた「ガーゼ」であるために、指定商品については「アクリノールを全体に浸潤させたガーゼ、その他のガーゼ」と補正すべきところを、指令のとおり単に「ガーゼ」と商品補正したものである。

しかし、本件の商品は、証拠書類により理解できるように、薬剤をガーゼ全体に浸潤させ分離不能の状態で一体となったものであり、医療補助品としての単なる「ガーゼ」とは品質・用途・効能が全く異質なものである。

請求人は前記使用商品についての理解不足なところがあるが、これはアメリカ合衆国では肌に密着させる商品を使用したことがない慣習によるものであって、我が国においては、古くから肌に貼着する薬が皮膚を通じて筋肉まで浸透し患部を治癒する治療方法として薬を紙片または布片に塗布した「膏薬」が愛用されてきたことは周知である。

これは、現在においても噴霧式、塗布式などよりは薬剤を患部により長時間保持させることのできる方法として普通に親しまれている。

そして、この膏薬は当然のとながら「薬剤」として認識されているものであり、件外他社の登録商標「サロンパス」等の紙片または布片に塗布した湿布薬も当然のことながら「薬剤」として認められていることからみれば、本件の使用商品は明らかに「薬剤」である。

したがって、請求人の主張は理解不足のところがあり当然理由のないものである。

厚生省では、この種商品の製造承認の区分けとして「医薬品」、「医薬部外品」の区別を設けているが、本件商標は「医薬品」としての製造承認を受けているものである(乙第6号証の1)。

その内容は、前記乙第6号証の1及び乙第5号証の2で明らかなとおり、日本薬局方では「局所用殺菌・消毒薬」として掲載されている「薬剤のアクリノール」を、乙第6号証の1にあっては、日本薬局方グリセリン、乙第5号証の2にあっては、日本薬局方マクロゴール400などで溶解したアクリノール溶液をガーゼに浸潤させ、それをそのまま、又は乾燥させた後に支持部材である粘着テープで支持して、患部に貼付することによって切り傷、すり傷、化膿性創傷等を治癒させる商品である。

しかも、同時に添付した乙第5号証「'93一般用医薬品データブック」(廣川書店発行)157頁によれば、「救急絆創膏」もまたアクリノール含有のものであれば「医薬品」の範疇に入るものとし、単なる医療補助品とは区別されている。

したがって、本件商品を総合的に勘案すれば、正に「薬剤」であって且つ使用商標は上記した商品について現実に使用していることは事実であるから、本件商標は「薬剤」について使用しているものである。通常使用権者の使用である。

<2>通常使用権者の使用である。

被請求人は登録商標(D)が登録になるまでは、本件商標に基づいてリバテープ社に対して「リバテープ」なる態様での使用を、また、玉川衛材社に対しては、取敢えず登録商標(B)に基づいて「リバガーゼ」なる態様での使用をそれぞれ承認し、登録商標(D)の登録後は、それぞれ前記の商標態様で引き続きその使用を承認しているものである。

そして、「リバ」の文字に担体である「ガーゼ」ないし支持部材である「テープ」の文字を付記したに過ぎないこれらの商標態様のそれぞれの要部は、全て登録商標(D)と同一であり、したがって、それぞれの商品について登録商標(D)が使用されていると認められるのが相当である。

<3>継続して3年以上日本国内において使用している。

乙第5号証の2乃至同第11号証及び同第16号証のとおり、登録商標(D)は、本件審判請求の登録前即ち平成5年11月15日前3年はもとより現在も継続して使用されており、正規の使用権設定登録はないが、本件商標と連合する登録商標が通常使用権者により使用されていることは明白である。

(3)本件商標の指定商品は、「医薬品」として厚生省の認可を受けている。

従来から、商標法上の商品としては「医薬品」の判断について不明確な部分があり、例えば「薬剤」と「医薬部外品」、「医薬部外品」と「化粧品」、「薬剤」と「化粧品」、そして「薬剤」と「医療補助品」等の認定が複雑である。

したがって、特許庁では、本件商品のように単なる「ガーゼ」或いは「テープ」ではない特殊な商品についての認定は、現物またはカタログ、さらに他の証拠物件(厚生省の認可等)等を参照して判断しているところである。

裁判所においても、商品の帰属については、商品の品質、原材料、効能、用途及び形状などを総合勘案して判断しているはずである。

本件商品は、いずれの観点から観察しても「薬剤」である。単なる「ガーゼ」及び「テープ」であれば、正に傷口を覆うための医療補助品であろうが、薬剤を浸潤させた本件商品は創傷保護のためのみではなく、殺菌・消毒により創傷治癒を目的とするものであり、「ガーゼに浸潤させたアクリノール殺菌消毒剤」である。

請求人は、使用者と被請求人との関係が明らかでないと主張しているが、その関係については前回の答弁書で説明しているところであり、改めて主張する必要はないが、商標の使用者は被請求人の通常使用権者であることは間違いのない事実である。

また、使用している商標「リバテープ」、「リバガーゼ」、「新リバガーゼ」及び「SHINRIBAGAUZE」の各商標は、その構成文字から「リバ」及び「RIBA」の文字が自他商品の識別力を果たす部分と認識されるものであり、本件商標の使用態様は「商標の識別性に影響を与えることなく、構成部分に変更を加えて使用する場合」といえるものである。

4.そこで判断するに、本件商標と相互に連合商標となっている登録第45277号商標は、「RIBA」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品」を指定商品として、明治43年12月30日登録出願、同44年3月25日に設定登録され、その後、5回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じ登録第959187号商標は、「リバガーゼ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「ガーゼ」を指定商品として昭和44年5月13日登録出願、同47年4月17日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2127260号商標は、「リバエース」の片仮名文字と「LIBAACE」の欧文字を二段に併記してなり、第1類「化学品(他の類に属する者を除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和55年12月26日登録出願、平成1年3月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

つぎに、本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第45277号商標には、商品「殺菌ガーゼ付救急絆創膏」について専用使用権が設定登録されているところ、該商品は、その表示よりすれば、医者が処置する程のことのない軽度の切り傷、すり傷等を家庭内において殺菌消毒及び該創傷面を保護するものとして一般家庭向け主として販売されているものと認められるものであるから、たとえ該商品が、薬事法との関係では医薬品として製造承認されたものであり、かつ、薬効をも有するものであるとしても、その販売場所、用途及び使用目的等を総合勘案すれば、商標法上においては医療補助品に属する商品であるというのが相当である。

そして、本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第959187号商標の指定商品は、その登録出願から設定登録に至る迄の経緯はさておき、第1類に属する「医療補助品」に含まれる「ガーゼ」のみであり、薬剤には使用権が及ばず、たとえ実際の使用商品「アクリノールを浸潤させたガーゼ」が商標法上の薬剤に属するものであるとしても、その使用は使用権のない商品への使用である。

また、件外リバテープ製薬株式会社の使用に係る商標「リバテープW」及び件外玉川衛材株式会社の使用に係る商標「SHINRIBAGAUZE-A」、「新バリガーゼA」、「タマガワ新リバガーゼA」及び「リバガーゼF」と本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記登録第45277号商標及び登録第2127260号商標とは、物理的に同一でなく、社会通念上も同一の商標とは認めがたいものである。

さらに、本件商標及び本件商標と相互に連合商標ととなっている登録商標についての通常使用権の存否に関して争いがあるのにもかかわらず、被請求人は、本件商標及び本件商標と相互に連合商標となっている上記各登録商標について、リバテープ製薬株式会社、玉川衛材株式会社及び他数社に通常使用権を許諾していると主張するのみで、該事実を称する何等の証拠の提出もないものである。

してみれば、本件商標は、これらの事実を総合勘案すると、被請求人の提出に係る前記乙各号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者(被請求人)、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」について、本件商標または本件商標と相互に連合商標となっている他の登録商標が使用されていることを認めることができない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「薬剤」についての登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

平成9年4月21日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

(別紙)

商標目録

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例